「わたしの隣人とはだれですか。」
(ルカによる福音書10章29節)
新約聖書の時代、ユダヤ人は、自分たちは特別に選ばれた民であり、他民族とは違うと考え、あまり関係を持ちませんでした。そんなユダヤ人の中でも律法の専門家と呼ばれる人が、イエスに永遠の命を得るために必要なものを質問します。イエスは逆に彼に問い返します。「律法のことならあなたは善く知っているでしょう」と言われているようです。
聖書に記されている最も大切な律法は、「全身全霊をかけて神を愛し、隣人を愛しなさい」とあることは、もちろん彼は知っていたのです。そこでイエスは、「それを実行しなさい」と言われました。つまり、彼は答えを知っているのに、質問をしたのです。そして、知っているだけで、実行していないということになるのです。
そこで自分を正当化しようとして「わたしの隣人とはだれですか」と質問をします。ここでイエスは、たとえを用いて教えられたのですが、隣人とは誰かという問いに、「誰が隣人になったか」と質問し返しておられます。それは、今の隣人である家族や仲間を愛するだけでなく、今は隣人でない人々とも隣人になりなさいと言われているのです。
それは自分の味方だけでなく、敵をも含む誰でも愛するようにということです。そもそも彼は、知りたいと思っていたのではなく、イエスが何と言って答えるのか、その答えに対して文句を言って、恥をかかせようとしていたのですが、愚かにも、逆に恥をかくことになったのです。さらに知識として知っているだけではなく、実行しなさいと言われました。
日本聖公会 浜田基督教会 牧師:司祭パウロ瀬山公一